ゼロから始めるインディーレーベルガイド

ゼロから始めるインディーレーベル はじめての自主企画ライブイベント開催ガイド

Tags: イベント企画, ライブイベント, プロモーション, アーティストサポート, 自主企画

インディーレーベルを運営する上で、アーティストの活動をサポートする重要な手段の一つに、ライブイベントの企画・開催があります。他のイベントへの出演機会を探すだけでなく、ご自身でゼロからイベントを企画し、実現させることは、レーベルのカラーを打ち出し、アーティストとファンとの繋がりを深める素晴らしい機会となります。

このガイドでは、「はじめて自主企画ライブイベントを開催したい」という初心者の方に向けて、企画の立て方から当日の運営、そして終了後のフォローアップまで、実践的なステップを分かりやすく解説します。

ライブイベントを自主企画する意義

まず、なぜ自主企画イベントを行うのか、その意義を改めて考えてみましょう。

自主企画は手間もかかりますが、その分得られるものも大きく、レーベル運営の重要なステップとなり得ます。

ステップ1:企画の基本を固める

イベント開催に向けて、最初に企画の基本的な部分を明確にしましょう。

目的とコンセプト設定

目的とコンセプトが明確であるほど、その後の会場選びやブッキング、プロモーションが一貫性を持って進められます。

ターゲットオーディエンスの想定

どのような人たちに来てほしいのか?(例:所属アーティストの既存ファン、特定の音楽ジャンルが好きな人、地元の人々など)ターゲットを絞ることで、効果的なプロモーション方法が見えてきます。

予算設定

イベント開催には費用がかかります。事前に大まかな予算を設定しましょう。主な費用項目としては、会場費、出演者への謝礼(出演料や交通費など)、PA/照明費、機材レンタル費、プロモーション費(印刷費、広告費)、人件費(スタッフへの謝礼など)、雑費などがあります。収入としては、チケット収入、物販収入、飲食売上(会場による)などが考えられます。収支のバランスを考慮し、現実的な予算を立てることが重要です。

開催時期と場所の検討

ステップ2:会場を探し、ブッキングする

企画の基本が固まったら、イベントを行う場所を探します。

会場の種類と選び方

インディーレーベルが利用しやすい会場には、以下のような種類があります。

会場を選ぶ際は、キャパシティ(収容人数)、設備(PA、照明、控室など)、費用(箱代、機材使用料など)、アクセス、規約(時間制限、音量制限、飲食持ち込みの可否など)をよく確認しましょう。

問い合わせと契約

候補となる会場に問い合わせ、利用規約や料金体系、空き状況を確認します。可能であれば一度下見に行き、雰囲気や設備を直接確認することをおすすめします。会場が決まったら、予約を行い、使用契約を結びます。契約内容(時間、料金、キャンセル規定、使用上の注意点など)はしっかりと確認し、不明な点は必ず質問してください。

ステップ3:出演アーティストを選定し、ブッキングする

自レーベルのアーティストだけでなく、他のアーティストをゲストとして招くことで、イベントの魅力を高め、集客に繋げることができます。

出演アーティストの選定基準

出演依頼と条件交渉

出演してほしいアーティストに、イベントの企画内容、日時、場所、出演時間、そして最も重要な「出演条件」(出演料、交通費、物販マージン、ノルマ/チャージバックの有無など)を明確に伝えて依頼します。条件については、予算に応じて交渉が必要になる場合もあります。双方にとって納得のいく形で合意を形成することが大切です。

契約または覚書

口約束だけでなく、出演条件などを記した簡単な契約書や覚書を交わすことを強く推奨します。これにより、後々のトラブルを防ぐことができます。特に、出演料の金額、支払い期日、キャンセルの場合の取り決めなどは明確にしておきましょう。

ステップ4:イベント内容の詳細設計

会場と出演者が決まったら、イベント当日の具体的な流れを設計します。

タイムテーブル作成

開場時間、開演時間、各出演者の演奏時間、転換時間、休憩時間などを詳細に盛り込んだタイムテーブルを作成します。出演者や会場スタッフと共有し、無理のないスケジュールにすることが重要です。

音響・照明・PAの手配/確認

会場に備え付けの設備を利用する場合は、事前にオペレーターの有無や機材リストを確認します。外部のPAエンジニアや照明スタッフを手配する場合は、早めに連絡を取り、必要な機材や費用について打ち合わせを行います。出演者には、使用楽器やアンプ、必要なマイク本数などを事前に確認しておき、PAエンジニアに伝えます(インプットリストの作成)。

受付・物販・飲食などの計画

スタッフ/協力者の手配と役割分担

受付、物販、誘導、機材搬入出、転換補助、出演者ケアなど、イベント運営には多くの人手が必要です。友人や知人に協力をお願いするか、必要であればアルバイトを手配します。それぞれの役割を明確に伝え、当日の流れを共有しておくことが成功の鍵となります。

ステップ5:プロモーションを行う

イベントの存在を多くの人に知らせ、来場を促します。

告知媒体の活用

効果的な告知内容とタイミング

イベント名、日時、場所、出演者、料金、チケット購入方法などを明確に記載します。出演者の紹介や、イベントにかける想いなどを付け加えることで、興味を引きやすくなります。告知はイベント開催の1ヶ月〜2ヶ月前から開始し、徐々に頻度を上げていくのが一般的です。

チケット販売方法

ステップ6:イベント当日の運営

準備してきたことを実行に移す日です。

会場設営とリハーサル

会場のオープン時間に合わせて入館し、会場設営(受付、物販スペースの準備など)を行います。PAや照明のチェックを行い、出演者のリハーサルを行います。タイムテーブル通りに進められるよう、スムーズな段取りを心がけます。

受付と会場案内

開場時間になったら、来場者を迎えます。チケットのもぎり、予約確認、当日券販売を丁寧に行います。会場内の導線や設備(トイレ、喫煙所など)について質問があれば答えられるようにしておきます。

進行管理とトラブル対応

タイムテーブル通りにイベントが進行しているか常に確認します。音響トラブル、機材故障、お客様同士のトラブルなど、予期せぬ事態が発生した場合も落ち着いて対応します。必要であれば、会場スタッフや出演者と連携を取りながら解決にあたります。

【法務関連の注意点】 * 騒音: 会場周辺への騒音に配慮し、会場の音量規定を遵守します。近隣からの苦情に繋がる可能性があります。 * 飲食物の提供: 飲食物を有料で提供する場合、食品衛生法に基づく営業許可が必要になる場合があります。会場の規定を確認してください。 * 未成年者への対応: 未成年者の飲酒・喫煙は法律で禁じられています。年齢確認を徹底するなど、会場のルールに従い、適切な対応を行います。 * 著作権/著作隣接権: 演奏楽曲の著作権処理(JASRAC等への申請)は、通常は会場側が行いますが、自主企画の場合は主催者側で確認・手配が必要な場合もあります。事前に会場やJASRAC等に確認してください。

具体的な判断や手続きについては、必要に応じて専門家(弁護士等)にご相談ください。

ステップ7:イベント終了後のフォローアップ

イベントが終わってからも、やるべきことはあります。

出演者への謝礼支払いと報告

約束した出演料や交通費を期日通りに支払います。イベントの動員数や収支について、出演者に報告すると丁寧です。

来場者へのお礼と情報発信

来場してくれた方々に、SNSなどを通じて感謝の気持ちを伝えます。イベントの様子の写真や動画などを共有するのも良いでしょう。次回のイベント告知に繋げることも可能です。

収支計算と反省

イベントにかかった費用と得られた収入を正確に計算し、収支を明確にします。うまくいった点、改善が必要な点を振り返り、次回のイベント企画に活かします。

まとめ:小さく始めて、経験を積む

はじめての自主企画イベントは、不安も多いかもしれません。しかし、最初から完璧を目指す必要はありません。まずはカフェや小さなレンタルスペースなど、リスクの少ない会場で、少数の出演者と協力して始めてみるのも良いでしょう。

経験を重ねるごとに、イベント企画・運営のノウハウは蓄積されていきます。そして、自主企画イベントを通じてアーティストは成長し、レーベルは独自の存在感を確立していくはずです。

このガイドが、あなたのインディーレーベルではじめてのライブイベントを企画・開催するための一助となれば幸いです。